何故飛ぶの?屋根材の風害考察・破風板と風切り丸の役目とは?

何故飛ぶの?屋根の風害考察・破風板と風切り丸の役目とは?

屋根材飛散の原因キーワードは隙間

今回の記事内容はこちらのタイトルに基づきまして風害の傾向と対策に付きましてご説明させて頂こうと思います。この記事は私の現場経験と考察に基づき記述しております事を予めご了承頂き読み進めくださいますと幸いです。先ず実地検証からですが2018年度の台風21号上陸の際に数々の被害現場に赴きましたその結果を順次記していきます。考察全体から伺える大切なキーワードは『隙間』となります。

スレート屋根。飛散して捻じ曲がる棟板金
屋根材飛散のケース1

こちらは薄型化粧スレート屋根といいます。※通称はコロニアル※このコロニアルの屋根の棟板金部分が飛散していました。何故でしょうか?棟板金と平部の間に隙間が生じていたからでございます。

風でバラバラにされた瓦屋根
屋根材飛散のケース2

次はこちらの現場から。こちらの現場は滋賀県となりますが滅多に飛散する事のない日本瓦屋根の平部ですが飛散しておりました。雑感ではございますけど今回の台風21号の被害は私の住む大阪府より滋賀県の方が酷く感じました。こちらも強風で一枚でも剥離されれば隙間が生じます。それが連続飛散の原因ですが写真の箇所の様にそれ以上飛散が進まなかった理由としましては瓦自体の重量が重なり風圧が生む揚力に耐えれたからだと考えられます。

飛散したアスファルトシングルの屋根
屋根材飛散のケース 3

次はこちらの屋根材が飛散しています現場の写真。こちらの屋根はアスファルトシングルで施工された屋根で飛散の原因はやはり隙間となります。アスファルトシングルと野地との密着力が無い部分に隙間が生じていて殆ど飛散していました。

強風で浮き上がりズレてしまった右袖瓦
屋根材飛散のケース4

次はこちらの瓦屋根の建材名称は右袖瓦といいます。写真の屋根部位としての名称はケラバといいまして最も風害を受けやすい箇所でもあります。こちらは建材自体の隙間ではなくて元々から『構造的な隙間』がありますので揚力が生まれ写真の様にズレが発生してしまいました。

屋根材が飛散する原因は隙間から生まれる揚力となります

それでは次に『構造的な隙間』を以下の写真を用いまして説明させて頂こうと思います。

屋根材飛散のケース1~3までに例を挙げました『コロニアル』をや『地瓦平部』をや『アスファルトシングル』とは違いましてこちらのケラバ部分は写真の様に何時も空気の対流が発生してる環境の住居が多く存在しています。※ビル風の影響や川風の影響を直接受けてしまう環境にある住居などですね※

写真の様にケラバ(破風部)を挟んで空気の流れが上下に二分されますと圧力の差が生じまして揚力といいます物体を上に押し上げる力が発生します。

『揚力』に関しましての物理的説明は以下の文章を引用させて頂きました。

元来,飛行機の翼に対して働く力のうち,進行方向に直角な成分をいうが,一般には流体中を進行する物体が,進行方向と直角の方向に受ける力を揚力という。飛行機の翼やスプーンのような非対称形の物体に流れが当ると,流れは片側では加速され,他の側では減速される。加速側では減速側に比べて圧力が低下するから,その圧力差によって揚力が生じる。円柱のような対称物体でも,回転させて流れを非対称にすると揚力が生じる

屋根材が飛散する原因は揚力

こちらの説明の様に物体の上下間に隙間があるという事はその物体を挟んで上と下に空気の対流による圧力差が生まれ、そこに揚力が発生するという事ですね。こちらの構造がケラバ・破風部は最初から構造的隙間を備えているという事となります。

そこでこの揚力を発生させない様にする役目の部材を破風板といいまして風害に対しての重要な役割り部材として長年重宝されて参りました。破風板は屋根材に対して下の空気の流れを遮断する役目がありますので揚力を押さえる働きがあるという事でございます。こちらの写真は銅板屋根の破風と破風板の写真ですが銅板は瓦よりも軽いのでこの様な二重構造を取っていると私は考察しています。

風害に遭わないようにされている工夫

また、破風板だけでなく日本瓦では風切り丸といいます躯体重量による飛散防止や平部の納まり易さを考慮した部位も御座います。こちらの写真がその部位です。破風板、風切り丸それぞれ役目は違いますが飛散させないという目的は同じとなります。重さも対耐風には十分な効力を持っているからでもございます。

重さで風に対抗しようとする工夫です

纏めますと飛行機が飛ぶ原理と屋根材が飛ぶ原理は強風時には同じ原理が働きます

以上となります。動画も作成させて頂きましたのでよろしければご覧くださいませ。

ありがとうございました!!!