銅板の穴開きと裂傷と摩耗と屋根勾配と風害考察
銅板の穴開きと裂傷と摩耗と屋根勾配と風害考察
みなさまこんにちは。こちらの記事は2013年に書かせて頂きました『銅板の穴開きと裂傷と摩耗と屋根勾配と風害考察』リライト記事となります。
摩耗による銅板の穴開き
左の動画は、銅樋の穴開きのメカニズムの詳細を頂きました現場の動画となります。銅製の樋の穴開きは流れ行き長さ(樋から棟瓦までの長さ)が4m辺りを超えた時に軒樋や鮟鱇に躊躇に見られました。流れ行き2.5m未満の横樋には穴は開いていませんでしたので酸性雨の所為とは少し考え難くなります。
谷樋や軒樋の穴開きは一般的には酸性雨の所為と認識されておりましたのですが、それだけではなくもう一つの考え方としましては落下水流による摩耗、特に空気の汚れた現在では雨中に混じる工業不純物による摩耗が原因とも考えられます。
銅は緑青という建材自身の錆で耐久性を維持しておりますので降雨時にこの緑青が落下水流に削られてまた再生を図り緑青を噴き、また削られを繰り返して希薄化した後に穴が開くという考え方でございます。この場合には再生銅なのか純銅なのかも耐久性に影響しているかもしれません。(純銅の方が緑青を噴く力が強く落下水流には削られ易く弱いという事にも成り得ます)
電蝕による穴あき
※詳しい数値や数式は割愛させて頂きますが電蝕とは2種類の異種金属が水に触れた時にイオン化した分子が片方の金属に移動していく物理現象となります。
ですから銅板自体が分厚い程高耐久なのは結果として認識できるその理由は電蝕が起こり難い、若しくは電蝕が起こり切ってしまっても穴が開きにくいという考え方に基づいています。※銅板が分厚ければ分厚い程銅が不純物より多く含まれていきますので不純物へと銅がイオン化によって移動しましても穴が開くまでに至らないという考え方でございます。
腰葺き・晒し葺き一文字垂れ直下の穴開きは銅板と瓦との間に堆積した埃が銅版の熱膨張により研磨剤の働きを成し同じように穴が開きます。(特に軒瓦谷芯に於きましては埃の堆積が途切れる事は物理的にありえませんのでケラバより穴開きはより早く進行致します。)
腰葺き・晒し葺きの一文字瓦の垂れ直下の穴開きはこのイオン化する電蝕の影響を受けていると改めて考え直させて頂きました。その理由は電蝕が起こる理由は飛来物によるものや埃の堆積によるものではなくて銅板自体に初めから含有されている異種金属との電蝕と考える方がより解に近いと考え直していたからで棟瓦に通している銅線の腐食や鬼瓦を緊結している銅線の腐食もその理屈なら完全に辻褄が合うからでございます。
銅板の軒樋を施工する場合シリコンを塗布しましたり銅のテープを張りましたり、軒瓦にL字の板金を谷直下に備えれば穴開きは防げますしコールタールを塗り込んでいる銅樋の効果も拝見した事がございます。また銅製の鮟鱇の場合呼び樋は二重底で対応すると教えて頂いた事もございました。
こちらの動画にてまとめさせて頂きました。よろしければごらんくださいませ。
実際の補修例と風害考察
こちらは摩耗ではなく裂傷による雨漏りとなります。金属は熱膨張しますので、施工時の僅かな歪みや凹みが経年により金属疲労致します。
ですので摩耗による雨漏りでしたら交換が必要ですが、流れ行き2m程で摩耗は無く更には膨張伸縮もひと段落した溝谷でしたのでコーキングと鋼板カバーで充分と判断させて頂いております。軒瓦をめくりオーバーフローの水道が出来ていないか否か確認させていただきました。
全く問題はありませんでした。
本日最後の30年前のカラーベストの診断 ↓
和歌山県和歌山市の立地。棟包みは塩害の影響もあり塗膜はめくれておりますが、特筆すべきはこの風害多発地域での瓦本体の飛散が30年無かった事。ひも解けばこの屋根は4寸5分あり埃の堆積によりとても地下足袋では登れ無い屋根でしたが勾配を取ればまた、風にも強いという事を学ばせてもらいました。たとえばスカートを履いた女性に立って頂き垂直に強風を浴びせます。この時点ではスカートは捲れませんが両脇を男性が支え徐々に女性を倒していきますと(屋根勾配が緩くなると)スカートはめくれあがります。
また瓦棒屋根の風害の殆どは部分吊り子による施工が躊躇でありまして、通しの吊り子で納まっている瓦棒屋根は風害にも打ち勝つ可能性が跳ね上がります。)※通しの釣り子とは棟から軒迄の長い釣り子であるのですが私も未だそれを視た事がないので何時か拝見できたらと思っております。
ありがとうございました!!!
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