屋根を葺き替えないと雨漏りは直りませんか?
雨漏り調査をさせて頂いた時【もう家の屋根材は寿命で葺き替え工事をしないと雨漏りは直らないと言われました。】この様な疑問を頂く事がしばしば御座います。
屋根材や下地やルーフィンングが寿命なので雨漏りが直らないと御提案をされた方にはきっとこのページがお役にたてるかと思います。
今回は30年以上現場に従事して参りました職人の視点から屋根材寿命と施工寿命の2つに分けてご説明させて頂こうと思います。
こちらの動画では今回の記事を音声でお届けしています。合わせてご利用していただけましたら嬉しく思います。
葺き替え工事やガルバニウム鋼板によるカバー工法が必要な屋根
先ずは屋根の葺き替え工事が必要な場合はどんな事例があるのかを御説明させていただきます。葺き替え工事が必要な屋根のトップはやはり緩勾配不適合建材使用屋根です。
(緩勾配不適合建材使用屋根とはもともとその屋根勾配と屋根材が適合していないので根本原因から手を入れなおさないと雨漏りが止まらないという屋根の事であります。
こちらは施工寿命の分類にあたります。
※緩勾配不適合建材使用屋根※
どの様な屋根材でありましても屋根の勾配が肝となりますので葺き替え工事が必要な屋根の主たる原因と言っても過言ではありません。
緩勾配不適合建材使用屋根の本当の肝の部分は屋根材には元々適合できる勾配があり雨水を排水出来る許容量が御座いますのでこれに適していないと屋根面積がおおきければ大きいほどその被害は甚大に広がるという事なのであります。
こちらは使用する屋根材によってどれだけの勾配が必要かを目視確認してきた我々の数字ではありますが目安としてください。また数字だけではなくて立地環境で考えるのが基本となります。
屋根勾配に適合した屋根材
(一般家屋にて普及している屋根材の必要勾配の例)
コロニアル・カラーベスト・4寸勾配以上
日本瓦・3寸以上(水返しあり)
日本瓦・4寸以上 水返し無し
鋼板晒し葺き 2寸以上
鋼板立平 1寸以上
スレート大波2寸5分以上
(コロニアル・カラーベスト)
(日本瓦 水返し有り)
水返しとは?
水返しとは雨水が屋根材の内部に侵入してきた際にその逆流を抑える為に施設してあります突起の事をいいます。ですから屋根勾配が緩ければ緩いほど逆流を抑える突起を高くするかもしくは逆流する重ね目を無くすという工夫が必要なのであります。
(銅板晒し葺き)
(ガルバニウム鋼板立平葺き)
仕様書に明記されている屋根材でも、そうでない屋根材でもその屋根勾配に適した屋根材を考えて施工する事が雨漏りを防ぐ基本となります。
ただ立地環境と施工面積によりましてはこれらの基準が必ずあてはまる訳ではありませんので現場考察の数はあればあるほど安心できるメンテナンス工事になりえます。
屋根勾配を考慮せずに無視して施工されている屋根は残念ですが葺き替え工事か鋼板によるカバー工法等適合建材に変更する必要性が発生する場合が御座います。
緩勾配不適合建材使用屋根がもたらす弊害
※葺き替えないといけない理由と事象※
次になぜ緩勾配不適合使用屋根が危険なのか?こちらのご説明をさせていただこうと思います。主な理由は下記の6項目で御座います。
①雨水を吐く排水能力が著しく低い(竣工時から雨漏りしている可能性もあり)
②コロニアルやカラーベストの場合ケラバ板金や棟板金へ暴風雨時の雨水の侵入の可能性とホコリの堆積率も上がる(ケラバからオーバーフロー雨漏りや毛細管現象雨漏りを引き起こす可能性も高くなります)
※ケラバとは屋根の端の部分とご理解ください。
③ルーフィングが破れている箇所は下地材木を腐らせる危険性がある。
④緊結材・ビスや釘の腐食による屋根材飛散の危険性がある。(保険に入る必要性もありますね)
⑤毛細管雨漏りの進行が速くその状態で塗装した場合劣化塗膜がさらに排水を止める事にも繋がる(塗装してはいけない屋根もあるのです)
⑥停滞する雨水の時間が長い為屋根材の裏面からの雨水の浸透率が上がり結果、凍て割れや裂傷の可能性早期劣化の可能性も上がってしまう。
これらが緩勾配不適合建材使用屋根の弊害で御座います。
工事や調査診断の実例
薄型化粧スレート屋根のの雨漏り
こちらの薄型化粧スレート屋根からの雨漏りは2寸勾配であり尚且つ高台山間部宅地造成の立地にある屋根です。
適合勾配を考慮されていない事と共に環境も厳しい屋根でしたのでこの様な屋根にはガルバニウム鋼板の立平が適合勾配となりますからカバー工法を御提案させて頂きました。
アスファルトシングル屋根の雨漏り
こちらのアスファルトシングルの屋根は一寸勾配で不適合建材使用屋根でありました。
こちらもガルバニウム鋼板によるカバー工法をお勧め致しました。
雨漏りが完全に直るこの工事により構造材木の腐食進行は結露を除き止まります。
鉄骨造りの小屋裏結露発生での構造用合板の腐食等は業者でも施主様でも工事前に小屋裏に入ればある程度は目視確認可能で御座います。
※雨漏りでない場合は鉄骨に付着する結露がカギとなります。
緩勾配不適合建材使用屋根+塗装
上記の写真は緩勾配不適合建材使用屋根にさらに塗装を施しております。雨漏りを塗装で直そうとした場合最も間違いを犯しやすい事例の一つで御座います。
塗装をする前に充分注意して頂きたいと思います。こちらも葺き替え工事が必要と判断させて頂きました。
何れも施工寿命でありますね
躯体年数が経ち、屋根の軽量化を望むお声
昭和56年に耐震基準が変わりました。
昭和56年以前の家屋は、変更後の耐力が不足している場合があり大地震に対して倒壊の恐れがあるかもしれません。
写真の屋根は度重なる長屋切り離しによる屋根で壁・屋根共、耐力の低下は歴然としております。ただ屋根の軽量化だけでなく家屋自体の耐震性も視野に入れなければ本当の意味での耐震工事とはならないのですがやはり予算が足枷となります。
施主様の御要望にももちろんお答え出来ますがこの時に大切な事は充分歴史的に結果を残している建材を使用する事だと思います。
一概には言えませんが新建材の早期劣化や廃版を私共は目の当りにしてきましたので長く使用されている建材を選ぶ事が安全性を考慮する場合最も大切なことではないかと思われます。
以上が主だった緩勾配不適合建材使用屋根に付随した雨漏りする屋根に対する葺き替え工事を御提案せざる得ない内容でございます。
葺き替え工事が必要でない場合
葺き替え工事が必要なケースは緩勾配不適合建材使用屋根が殆どであると御説明させて頂きました。
それとは真逆の適合勾配と好立地に位置する家屋の雨漏りは葺き替えの必要性は無く充分修理で御対応可能で御座います。
例えば瓦は100年以上経過していても修理可能な屋根は沢山御座いますし水流が集約して流れない銅板の晒し葺きなども80年の間メンテナンスフリーの実績を持っております。(京都の墓門にて確認致しました)屋根材寿命がまだわからない場合もございます。
まとめ
屋根を葺き替えないと雨漏りは直りませんか?
屋根の一次メンテナンスで失敗しなければ殆どの場合葺き替え工事の必要性無く雨漏りを直す事が適います。
屋根材自体の経過年数は経っていてもまだまだ充分機能しているケースも沢山御座いますので葺き替えが必要な屋根は何故葺き替えが必要なのか?こちらに納得のできる説明が頂けましたらより安心でありますね。
雨漏りした際に葺き替えしか無いと御提案された方(一つの選択肢しかないと提案された方)はより多くの業者の診断を得て御自分が納得出来るまで慌てないで業者選択の時間を割いて頂きます様に御願い致します。
屋根の特徴、経過年数の特徴、建材の特徴、立地の影響等加味した屋根調査を受けて下さい。
最後に屋根瓦を新しく変えて屋根のリフレッシュをご要望の施主様にも適合勾配の屋根材にて葺き替えて頂ければと思います。
こちらは私共の動画サイトのリンクとなります。
こちらの記事は屋根修理や雨漏り修理に必要な知識を7つに纏めさせて頂きました。お時間がございましたら是非ご活用ください!
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