ラバーロック・コーキングや瓦止めで雨漏りは直りますか?
ラバーロック・コーキングや瓦止めで雨漏りは直りますか?というご質問を頂きましてこの記事では私の視点からラバーロックやシリコンを用いた雨漏り修理の是非を考察させて頂いております。いつもありがとう御座います。
こちらの動画では私が今回の記事を口頭で御説明させて頂いております。よろしければご利用下さい。
ラバーロックとは?コーキング材を用いた工事の名称
ラバーロックとはシリコンコーキング材で屋根の隙間を埋める工事の名称です。その昔阪神淡路大震災を皮切りに瓦屋根をズレない様にする事をTV宣伝等を用いて大々的に広まった工法の一つでありますが大災害時の施主様の不安をよそにエスカレートした工事単価は軽量屋根材(葺き替え工事)にも及ぶ程高額に成る経緯がありました。
また爆発的に広まった理由の一つに熟練した技能が必要無く誰でも簡単に施工出来た事もその広がりに拍車をかけておりました。
その様な背景が元にありますので現在シリコンコーキング材を屋根に塗る工事とは呼び名が複数御座います。何れも同じ工事内容と解釈して下さって問題御座いません。
①ラバーロック工事
②ラバーコーキング工事
③シリコン瓦止め工事
④瓦パテ止め工事
⑤ズレ固定工事
⑥瓦止め工事(ラバーロック工事)
実際にラバーロック工事で修理された後の瓦屋根の写真
ラバーロックのメリットとデメリット
それではこのラバーロック瓦止め工事の効能ですが、昔の土葺き工法に於きまして極端に葺き土の少ない瓦屋根などは、確かに瓦はズレ難くなりますし多少の風害にも強く成る事は事実です。
記憶に新しいところによりますと2018年の大阪地震、また台風21号にてラバーロックの有無が風害や振動に耐えた実例を私共は、実際の現場応急処置工事を施している時に屋根の上から確認致しました。全然無駄ということではないのですね。
ただこれは結果論でして家屋の立地条件や瓦屋根を葺いている工法によりましてはそもそもラバーロック工事が必要で無かったかもしれないという考察も無視できません。
ですので土葺き工法ではなく例えば乾式工法でズレも飛散も起こり難い屋根にこちらの工事を勧められた場合にはその理由を御自宅の初期施工の方法や経年劣化具合から充分に吟味して施主様ご自身が納得出来る迄実際の施工を焦らないという事が何より大切で御座います。
※最初からズレ難い工法の瓦屋根には意味がないからです。※
この工事のメリット・デメリットは何と申しましても残念ながら業者本位の調査や見積もりが横行した事により発生した心情的な事でもあると思います。何におきましても自然災害に絶対という言葉は使えないのでありますね。
何が正しいかは施工される皆様と信頼を寄せる施工業者の方々が決める事でも御座いますのでラバーロック工事でも、最新式の工法でも瓦がズレなければ大地震の際に家屋の倒壊を招く事もありますから屋根構造だけでなく家屋構造全体で考える事がさらに重要であると私共は考えます。
また、この工事で雨漏りが直りますか?と聞かれましたらこれはもう殆ど直らないと私共はお答えさせて頂いております。
瓦屋根雨漏り修理の一次調査に於きましていきなりシリコンで雨漏りを止めるという発想は我々には御座いませんし私共はシリコンで施工されて雨漏りが直らなかった事後処理的な施工を沢山こなしてきたからで御座います。
とは申しましてももちろん箇所によりましては雨漏りは直る場合も御座いますのでやはり瓦屋根構造を知っている方の施工が望まれます。
雨漏りが直る場合!!
写真の棟瓦取り合い部の漆喰の代わりにシリコンを塗った場合漆喰より防水性能の高いシリコンはこの部位からの雨漏りを止める事が出来ます。(それだけが原因の場合)
(ブリードというシリコン特有の汚れは付着してしまいますが強度的には漆喰をはるかに凌駕致します。)
また平部地瓦がズレテいる場合
築年数も古く葺き直しの予算まで届かない方や建て直し迄の一次繋ぎ等、比較的軽度の瓦ズレでしたらズレている地瓦を押し上げて調性瓦尻に溜まった埃の撤去及び必要とあれば水返しの施設その後平部地瓦の表層にシリコンを少し付ける程度でしたら雨漏りは直ります。
※この少しと言う加減が重要で、躯体の構造によりましては災害時に瓦を落とす事で躯体の倒壊を防いでいる家屋も今なお現役で存在し、瓦屋根全面シリコン塗布など躯体状況を無視した施工は震災時には倒壊を招く恐れがあるからです。
他には谷鋼板の穴を塞いだり、割れている瓦を一次的につないだりなど。(要約しますとDIYでも修理可能で雨漏りが直る場合も御座います。)
瓦止め工事が必要でない屋根とは?
比較的簡易な雨漏り修理では無く、瓦止め工事が必要でない屋根にも施工されてきた事実と現在でも必要でない瓦屋根に勧める方もおられるという事実を知って頂きたいと思います。
こちらの棟瓦は震災後葺き替えていた16年経過の燻瓦屋根の写真です。面戸瓦を使用している点目立った施工不備など無い点などから一切この瓦止め工事は必要ありませんでした。
本来持つ棟瓦の構造で、排水機能は少し低下していても雨漏りはまだしておりませんが。。。。この工事の後雨漏りが発生してしまいました。
こちらは平成28年に診断させて頂いた土葺き釉薬瓦の瓦屋根で御座います。下葺き材トントン(杉材)と土の密着も良く土量も充分で土に食い込んだ瓦の爪も有り瓦桟木に頼らなくても瓦のズレは35年経った現在でもありません。
こちらの屋根にラバーロックを勧めている方がおられ真意の確認の為、診断させて頂いた次第です。何もしなくても問題無しと判断させて頂きました。。。(^^;)
こちらの屋根は土葺き工法ではなく引っ掛け桟葺き工法この工法も瓦裏面の爪を横木(瓦桟木)に引っ掛けて葺き上げる為ズレ難く、瓦止め工事は必要ありません。上記のシリコンを用いた工事自体は、さほど技術・考察も必要ありませんのでどなたでも施工可能です。
誰でも出来るという事は瓦屋根の構造を全く知らない方でもこの工事に従事しその結果多くの弊害が残りました。
棟瓦表層にシリコンを塗布した場合の弊害
上の写真の隅棟瓦の瓦止め工事は雨漏り致します。青い点が棟瓦の構造上雨水が入って来る箇所でありますが、水の出口が塞がれてしまっているからです。
陸棟をジグザグに千鳥でシリコンを塗布した場合。陸棟瓦の崩壊には効果はありますが、雨漏りには何の効果もありません。むしろ漆喰の重ね塗りとセットで排水量が落ち崩壊を先送りにする効果を待つまでも無く雨漏りする場合があります。
棟瓦内部構造に不備が出ているならば、棟瓦の積み直しが正解となります。
※恒常風による雨漏りの危険性を考える※
(恒常風とは年間を通して同じ方向から吹いている風、日本では南西)
※近隣建設物の影響で必ずしも南西とは限りません。※
上の図は簡単な切り妻屋根の伏図です。陸棟瓦が恒常風に対して水平か垂直かによってジグザグに塗るシリコンの危険度が変わります。長尺の千鳥シリコン塗布は確実に排水量が落ちますので、棟瓦がどの方向に向いているかによってこの工事の弊害は分化致します。図の右の屋根の方が左の屋根より多くの雨水を受けますので雨漏りする危険度は高くなります。
ですので風が作る水道の危険性のある立地ではこの施工は控えた方が良ろしいかと思います。
それでは全面を塞いでしまおうと施工された棟瓦の写真です。こちらもシリコンの熱膨張でピンフォールが空きそこから雨水は侵入。雨水の出口が無く雨漏りしておりました。
シリコンを絶対塗ってはいけない場所
上の写真の赤丸の部分は常に雨が集中してくる地瓦谷といいます。雨水が集中するこの部位にシリコンは絶対に塗ってはいけません。
それは何故でしょうか?
雨が運んで来るのは水だけではありません。
雨水に混じる・黄砂・浜砂・あらゆる工業不純物、昨今では中国の大気汚染物質などが偏西風に乗り雨に混じって降ってくる可能性も視野に入れなければなりません。
これらの不純物はいとも簡単に地瓦谷芯にあるシリコンを摩耗してきますのでシリコンの熱膨張及び摩耗などで一度でも破られますと今度は雨水が出口を確保する事が出来ず野地板まで干渉してしまいます。
長雨時等、地瓦谷芯は言わば小さな土石流状態となりますので、この部位のシリコンは瓦屋根にとっては破壊行為と同意語で御座います。
(明らかに水流の派生しない部位との劣化速度が違います。)
(銅板の穴開きと原理は同じですね。)
雨漏りが止まるのは一時的で保障など頂いても全くの無意味です。熱膨張頻度が高く日照時間の長い屋根面を皮切りに全面漏水を引き起す可能性も御座います。
劣化してくるシリコンが堰となり、雨漏りは以前の状態より倍化致します。
また屋根勾配や内部の水返し・葺き土の二次防水性能にかろうじて助けられ雨漏りしなかった場合でも、通気を遮断され瓦の重ね目に常に滞在し続ける雨水・結露等の水分は本来起こる筈が無かった瓦自体の凍てによる損傷を招いてしまいます。
シリコンの寿命が尽きれば増し打ちを施せば良いと言われた方は注意して下さい。以上の事から、DIYでも瓦谷の部位は塗らないで下さいね。実際に雨水がたまっていた動画も御座います。
実際のラバーロック工事の㎡単価と相場
瓦ズレ修理等、熟練した技術が必要でない場合の実際の工事単価の相場は店舗により様々でしょうけど私共の様な一次施工店が施工するならばおよそ1㎡あたり1000円~2000円の範囲だと思います。
100㎡で10~20万円
30坪で10~20万円
コーキングや瓦止め工事で雨漏りは直りますか?まとめ
如何でしたでしょうか?
瓦止め工事・ラバーロック工事・シリコン瓦止め工事これらの工事で雨漏りを直して貰った場合最も怖い事はもうどうしようも無い場合も御座いますが雨漏りが再発した時シリコンの塗布量を問わずして高確率で葺き替え工事の選択しか無いと提案される事です。
また保証期間が切れていたり業者に連絡が付かなかったりかなりのストレスを強いられる場合も過去沢山の施主様が抱えておられました。
まとめますとシリコンを用いた雨漏り修理の場合
①直る箇所とやり方もあります。
②悪化する場合もあります。
③悪化した場合最悪葺き替えしか選択肢が無い場合もあります。
④実はこの工事の必要性が無い屋根が殆ど
ですので初期瓦屋根雨漏り修理の業者選択は慎重に行って下さいませ。
この記事がお役に立てましたら嬉しく思います。😊
こちらは私共の動画サイトのリンクとなります。
こちらの記事は屋根修理や雨漏り修理に必要な知識を7つに纏めさせて頂きました。お時間がございましたら是非ご活用ください!
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