屋根漆喰工事で雨漏りは直りますか?
屋根漆喰工事で雨漏りは直りますか?
御質問で非常に多くいただきます【屋根漆喰工事で雨漏りは直りますか?】こちらの疑問に対して御説明させて頂こうと思います。屋根漆喰工事をお考えの皆様のお役にたてる記事だと思いますのでお時間がございましたら是非御一読下さいませ。
【屋根漆喰の種類】
屋根漆喰の種類は主に2種類ありまして一つは石灰系の昔からある漆喰ともう一つはセメント系の漆喰になります。防水性と密着力はセメント系漆喰の方が強く施工も簡単で鏝離れがいいですね。
また例外的に【ふのり】を炊き込んで冷ましてから塗るという漆喰も子供のころ拝見いたしましたが現在ではその数も調合出来る職人さんが減っていると思われます。
屋根漆喰と呼ばれる箇所とは
瓦屋根の漆喰とは下記写真の白い部分の名称であります。
さて、漆喰を塗れば雨漏りは直ると診断された方に注意して頂きたい事は瓦屋根の漆喰は各所でその役割が違いますので漆喰工事で雨漏りが直る場合と直らない場合、また悪化してしまう場合があるという事を御理解して頂きたいと思います。
屋根の箇所。漆喰の箇所によってその呼び名は変わります。
鬼首漆喰(おにくびしっくい)
面土漆喰(めんどしっくい)
取り合い漆喰(とりあいしっくい)
と私共は呼んでおります。
お住いの地域により呼び名が変わるかもしれませんね。
※漆喰工事で雨漏りが直るケース※
鬼首漆喰や取り合い漆喰などはその部位その物が雨の侵入を防いでいる役割を担います。技巧によりましては漆喰に頼っていない仕舞い方も御座いますがこの部位の防水欠損、漆喰の剥離がそのまま雨漏りに繋がるケースは御座います。写真の赤丸で囲ってあるか箇所ですね。
また下記写真の様に直下の地瓦を捲り・水道(雨が通った道筋)を確認して補修を施せば雨漏りは確実にしかも低予算で直ります。
漆喰工事で雨漏りが直らないケース
では雨漏りが漆喰工事では直らない箇所の大半を占めます面土漆喰の補修についての御説明をさせて頂きます。
面土漆喰と呼ばれる瓦屋根棟の大部分をしめる三日月の形をした漆喰部分。漆喰が取れているから雨漏りする。詰め直せば雨漏りは直る。という考察も御座いますがそれは全く違うと私は考えております。
面土漆喰はあくまで化粧表面であり豪雨の際に発生する返り雨や熨斗瓦垂れからの巻き込み雨を葺き土に干渉させない程度の僅かな防水能力しか御座いません。
返り雨や熨斗瓦垂れからの巻き込み雨の図解
これらの現象を未然に防ぐ為に面土漆喰は厚みが必要で(薄すぎると棟土自体の結露や湿度を吸収した際の膨張で剥離してしまいます。)
尚且つ熨斗瓦垂れ(表面)の巻き込み雨を回避する為と、台熨斗瓦継ぎ目からの雨水を受けない様にする為に出来るだけ奥に位置する塗り方をしなければなりません。
(※奥に位置する面土漆喰でも塗厚が薄いと剥離し易くなります※)こちらの施工方法は最初から面土漆喰を塗って後、一段目の台熨斗瓦を積む(いちころ仕上げ)といいます。
※私の地域ではそう呼んできました。
漆喰工事の適正と不適正につきまして
見比べて頂きますとその違いが明らかでありますが上記写真の適正工事にて化粧部位としての面土漆喰はその機能をはじめて維持します。
上の写真の不適正漆喰工事にさらに古い漆喰を取らずに重ね塗る工事だけは意味がありませんので避けて下さい。といいますか絶対に避けましょう。
また面土漆喰は写真の様に雨が当たらない様にする施工が基本ですので面土漆喰が雨を止めているのではないのですね。
面土漆喰ではなく棟瓦の構造で雨漏りを止める
ではこの棟瓦はどのようにして雨漏りを食い止めているのでしょうか?
棟瓦は四角い蒲鉾板の様な瓦(熨斗瓦・のしかわら)を幾つも積み重ねて積んでおりますので雨の日には積み重ねている隙間にも雨水が入ってきますが入ってきた雨水を熨斗瓦の勾配(角度)稀に見る熨斗瓦自体に施設している水返しで雨水を外に排出しているのです。
最も重要視しなければならないのはこの熨斗瓦の勾配(角度)でありまして、屋根の高低差や立地にも左右されますが、勾配が緩いと簡単に棟の内部に雨水を引きこんでしまいます。
角度が大切なんですね。
棟瓦とは屋根の天辺に載せている瓦屋根の事です。
陸棟(りくむね・ろくむね)
隅棟(すみむね)
降り棟(くだりむね)
妻降り(つまくだり)
稚児棟(ちごむね)
など、箇所によってその呼び名は変わります。
雨の最終到達点である熨斗瓦、一番最初に積み上げる熨斗瓦の事を台熨斗瓦(だいのしかわら)と呼びこの部位の勾配が写真の様にほぼ水平か逆の勾配ですと普段の雨はなおさら少しでも風圧を伴えば入水量と排水量の均衡が取れず雨漏りしてしまいます。
雨漏りしないまでも葺き土が常に濡れておりますので熨斗瓦の裏面・水の浸透率が表層より高い釉薬瓦などは凍て(いて)による損傷を招いてしまいます。
また棟瓦内部の葺き土の量も重要でこれが多過ぎると棟内部の葺き土にも簡単に雨水が浸透してしまいます。
凍てに関しましては下記のリンクからご覧頂けます。
凍て割れ瓦・凍み割れ瓦って?
実際に面土漆喰が位置する適正箇所は下記写真の青線より上部の位置にあらなくてはなりません。青線より下の位置にある面土漆喰は、普通の雨でも雨水を受けております。
上記の事から、実際に棟からの雨の侵入を防いでいるのは、面土漆喰ではなく、熨斗瓦の勾配と内部の土量の調整である事を御理解頂けたと思います。
下記の動画でも詳しくご説明させて頂いておりますのでお時間がございましたらご覧くださいませ。
改善策としての棟瓦の積み直し工事
下記の写真は、棟瓦の積み直し工事に於きまして目視出来ない熨斗瓦の内部の継ぎ目にも防水処理をしております。
主な理由は、風圧を伴う雨が棟内部に干渉してきた時に内部熨斗瓦の継ぎ目からも台土に雨水を干渉させない為と熨斗瓦同志の結束力が上がる2つの効果の為で御座います。
また写真の隅棟は斜めに走っている分棟瓦内部の雨の干渉量が上から合算され空に対して水平の陸棟より水切れが悪いからです。
これら棟瓦の構造が機能していませんと結果として棟内部に侵入した雨水が面土漆喰を内側から破壊してしまい、ようやく目視にて状態の異常に気付く事となります。
こちらの写真の屋根の状態は、漆喰が取れて雨漏りしているのではなく、棟瓦自体の構造不備によって漆喰が取れてしまったという事です。
では、元々排水機能が低下している上記写真の棟瓦に対し新しい防水機能が高い面土漆喰を塗った場合にどういった事が起こるでしょうか?
古い面土漆喰を押し出してでも雨水を逃がそうとしていた棟は、雨水の出口を塞がれた事により今度は部屋内部へと続く水道(みずみち)を作ってしまいます。これが安易に漆喰工事をして雨漏りしてしまうメカニズムで御座います。
ホームセンターで売っている漆喰には水漏れに注意と書いています。これは間違った漆喰工事が膨大な雨漏りの原因と棟瓦自体の損壊を作ってきた証明の様な物と私は解釈しております。
メンテナンス不備でも雨漏りしない場合
上記の考察を完全に無視して漆喰工事をされても雨漏りしない場合も御座います。
その理由は、棟瓦の防水性能が破られましても棟瓦下の地瓦、追い当て調性や水落とし調性が機能している場合です。
棟瓦のメンテナンスが間違っていたとしても下地瓦に助けられている場合体感出来る雨漏りは派生致しません。しかしながら常に雨水が停滞しており、棟瓦自体の脆弱化は避けようがありません。
また当然本来葺き土が健常でありましたらあるはずの耐震性能も無くなってしまいますね。
※充分な小屋組と葺き土の乾燥と土質に守られている棟瓦は、阪神淡路大震災でもその機能を維持していたケースも多々御座いました。
40年経過中に自然に雨漏りが直りました理由
40年弱経過した中で雨漏りが自然に直った理由は赤丸の面土漆喰が内側からはがされ棟瓦の内部に侵入していた雨水が外に排出されるようになったからであります。ここを再び防水性の高い漆喰で埋めますとまた雨漏りが再発してしまいます。
ポイントとしまして雨水が棟瓦の内から外への流れなのか?外から内への流れなのか?の2通りが存在しているという認識が大切と捉え修理させて頂いております。
屋根漆喰工事のまとめ
それでは今回の記事屋根漆喰工事で雨漏りは直りますか?をまとめさせていただきます。
①漆喰で雨漏りが直るという診断は漏水箇所によるという事
②棟面土漆喰工事では雨漏りは直らないという事。
(最低限・雨漏り箇所の解体は必要)
③漆喰工事をしてかえって雨漏りしてしまうケースもある事。
御一読頂きましてありがとう御座いました。😊
こちらは私共の動画サイトのリンクとなります。
こちらの記事は屋根修理や雨漏り修理に必要な知識を7つに纏めさせて頂きました。お時間がございましたら是非ご活用ください!
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